設備の修理内容を現場に伝えるには?保全から製造への引き継ぎで修理後の不良を防ぐ方法
設備が止まり、保全の人が直して、生産を再開する。工場では毎日のようにあることですが、修理のあとは不良が出やすいタイミングでもあります。部品を替えた、位置を調整した、とりあえず動くように直した。こうした修理の中身が、次に機械を動かす作業者まで届いていないと、本当は必要な品質の確認が抜けてしまいます。この記事では、保全から製造の現場へ修理の内容を確実に引き継ぎ、修理のあとの不良を防ぐ方法を紹介します。
修理のあとに不良が出やすい理由
- 部品を替えると、少しずつ条件が変わる:同じ型番の部品でも、取り付けの位置や締め具合で、寸法や動きが変わることがある
- 調整や設定を変えている:直すために、位置・圧力・温度・速度などの設定を触っていることがある
- とりあえずの修理(仮の修理):部品が届くまでの応急の修理で、ふだんと同じ状態ではない
- 原因がまだ分かっていない:動くようにはなったが、また同じことが起きるかもしれない
どれも、修理した保全の人は知っています。問題は、それを次に機械を動かす人が知らないことです。
筆者の経験から:私が以前いた工場でも、保全の人が直した内容を現場が分かっておらず、修理のあとに必要だった品質の確認をしないまま生産を続けて、不良を作ってしまったことがあります。「直った」ことは伝わっていても、「何を直したか」「再開したら何を確かめるべきか」が伝わっていなかったのです。
修理の内容が現場に伝わらない理由
- 「直りました」だけで終わる:直ったことは伝わるが、何をしたか・何に気をつけるかが伝わらない
- 保全の記録が、保全の中だけにある:修理の記録や故障の履歴は残していても、作業者が見る場所にはない
- 班長止まりになる:保全から班長に口頭で伝えて、そこから作業者まで届かない
- 交代をまたぐ:夜に直した内容が、朝の人に引き継がれない
- 専門の言葉で書かれている:保全の言葉のままだと、作業者には何が変わったのか分かりにくい
- 再開してよいかの決まりがない:品質の確認をしてから動かすのか、すぐ量産に戻ってよいのかがあいまい
修理のあとに現場へ伝えたい6つのこと
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 1. どの設備で、何が起きたか | 2号機:ワークの位置ずれでアラーム停止 |
| 2. 何をしたか(交換・調整・設定の変更) | 位置決めのセンサーを交換し、取り付け位置を調整 |
| 3. 本修理か、仮の修理か | 本修理(部品の交換で完了) |
| 4. 再開したら確かめること | 再開後の最初の3個は、穴の位置を全数測る |
| 5. 様子を見ること・止める目安 | またアラームが出たら、続けずに止めて保全へ |
| 6. 次の予定・連絡先 | 分からないときは保全(内線 300) |
いちばん大事なのは4の「再開したら確かめること」です。どこを、何個、どうやって確かめるのかまで書きます。「品質に注意」だけでは、何をすればよいか分かりません。
書き方の例
| 伝わりにくい書き方 | 伝わる書き方 |
|---|---|
| 2号機、直りました。 | 【2号機】位置決めのセンサーを交換して、取り付け位置を調整しました。再開後の最初の3個は、穴の位置を全数測ってください。またアラームが出たら止めて、保全に連絡してください。 |
| 5号機、エア漏れ対応済み。 | 【5号機】エアのホースが破れていたので、テープで仮に直しています(仮の修理)。新しいホースは明日の午後に交換します。それまで、圧力の表示が0.4を下回ったら止めて、保全に連絡してください。 |
| プレス1号機、型を調整した。 | 【プレス1号機】型の位置を調整しました(10/15 夜勤)。再開後の最初の5個は、バリと曲げの角度を確認してください。測定の結果は記録用紙に書いてください。 |
型は「【設備】何をしたか + 本修理か仮か + 再開したら確かめること + 止める目安と連絡先」です。保全の言葉は、作業者が分かる言葉に言いかえます。
再開の前に「引き渡し」をする
修理が終わったら、すぐに量産へ戻すのではなく、保全から作業者へ設備を引き渡すひと手間を決まりにします。
- 保全が、修理の内容と「再開したら確かめること」を書く
- 作業者が、それを読んで受け取る(だれが読んだかを残す)
- 作業者が、決められた品質の確認をする(最初の数個を測るなど)
- 確認の結果がよければ、量産に戻る。悪ければ止めて、保全に戻す
大事なのは、修理した人と、次に動かす人の両方が「受け渡した」ことを分かっている状態にすることです。交代をまたぐときは、次の勤務帯の人にも同じ内容が届くようにします(夜勤から日勤への引き継ぎで漏れを防ぐには?)。
保全の記録と、現場への連絡をつなぐ
多くの工場では、保全は故障や修理の記録を残しています。ただ、その記録は保全が次の故障に備えるためのもので、作業者が作業の前に見る場所にはないことがほとんどです。
- 作業者向けには、短く別に出す:保全の記録をそのまま見せるより、上の6つのことだけを短く伝える
- 設備ごとに残す:その設備の前に立った人が、最近の修理と注意点をすぐ見られるようにする
- 仮の修理は、本修理まで残し続ける:本修理が終わったら「本修理しました」と出して区切る
- 同じ設備で修理が続いたら気づける:設備ごとに並べておくと、くり返しの故障に気づきやすい
修理で材料・手順などが変わる場合は、変化点として扱うと漏れにくくなります(変化点を作業者全員に伝えて記録に残すには?)。
修理のあとの引き継ぎチェックリスト
- □ どの設備で、何が起きて、何をしたかを書いた
- □ 本修理か、仮の修理かを書いた
- □ 再開したら確かめること(どこを・何個・どうやって)を書いた
- □ 止める目安と、連絡先を書いた
- □ 次に動かす作業者が受け取ったことを確かめた(交代の人にも)
- □ 品質の確認が終わってから、量産に戻した
- □ 仮の修理なら、本修理の予定と、終わったことを伝えた
まとめ
- 修理のあとは、部品の交換・調整・仮の修理などで、不良が出やすい
- 「直りました」だけでなく、何をしたか・再開したら何を確かめるかを伝える
- 保全から作業者へ「引き渡し」をして、品質の確認が終わってから量産に戻る
- 保全の記録とは別に、作業者向けの短い連絡を設備ごとに残す
設備ごとに修理の内容と注意点を残し、次に動かす人が「確認しました」を押したかまで分かる道具の例として、工場・製造業の申し送り・引き継ぎアプリ「レンバト」も紹介しています。