ヒヤリハットを全員に共有するには?工場で「報告して終わり」にしない6つのコツと書き方の例
「ヒヤリハットの報告は集まるのに、ほかの人に伝わっていない」「同じ場所で、別の人がまたヒヤリとした」。工場の安全活動でよく聞く悩みです。ヒヤリハットは、報告して終わりではなく、その場所で働く全員に伝わってはじめて役に立ちます。この記事では、ヒヤリハットを現場の全員に確実に共有するためのコツを、書き方の例と合わせて紹介します。
ヒヤリハットとは
ヒヤリハットは、仕事中に「もう少しでけがをするところだった」と、ヒヤリとしたりハッとしたりした出来事のことです。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、こうした出来事を取り上げて災害の防止につなげる活動を、仕事の危険を見つける有効な方法の一つとして紹介しています。
なぜ「共有」が大事なのか
よく知られているハインリッヒの法則では、1件の重い災害の背後に、29件の軽いけがと、300件のけがのない事故(ヒヤリハットにあたるもの)があるとされています。比率は作業によって変わりますが、大事なのは数字そのものより、重い災害と小さな出来事は同じ原因から起きるということです。
ヒヤリとした本人は、次から気をつけます。しかし、同じ機械・同じ通路で働くほかの人、別の勤務帯の人は、そのことを知りません。共有されないヒヤリハットは、次は別の人のけがになるかもしれません。
共有が止まってしまう理由
- 報告用紙が集まるだけ:安全の担当者のところで止まり、現場に戻ってこない
- 伝わるのが遅い:月1回の安全会議でまとめて紹介するころには、みんな忘れている
- 夜勤・休みの人に届かない:朝礼で話しても、その場にいない人には伝わらない
- どこの話か分からない:「床がすべりやすい」だけでは、どこに気をつければよいか分からない
- 言いにくい:報告すると怒られる、と感じると、そもそも報告が出てこない
- 言葉が伝わらない:外国人の作業者には、口頭や手書きでは伝わりにくい
ヒヤリハットを全員に共有する6つのコツ
1. 報告した人を責めないと決めておく
職場のあんぜんサイトでも、報告する人を責めないという取り決めを作って守ることが、ヒヤリハットの活動を長く続ける条件だとしています。手順どおりに作業していなかった場合も、手順そのものに無理がなかったかを見直すきっかけと考えます。共有するときも、名前を出して注意するのではなく、場所と状況を中心に伝えます。
2. 「どの機械・どの場所か」をはっきり書く
「3号機の右側の通路」「プレス2号機のワーク取り出し口」のように、場所を特定できる書き方にします。機械や場所ごとに残しておくと、その機械を使う人が作業の前に確認できます。
3. その日のうちに、次の勤務帯へ届ける
安全会議を待たずに、その日のうちに現場へ知らせます。交代勤務なら、次の勤務帯の人が作業を始める前に読めるようにします。夜勤明けの引き継ぎについては夜勤から日勤への引き継ぎのコツも参考にしてください。
4. 写真を付ける
すべりやすい床、出っ張った部品、見えにくい段差などは、文章よりも写真1枚のほうが早く正確に伝わります。外国人の作業者にも伝わりやすくなります。
5. 「読んだ」ことを確かめる
掲示板に貼るだけ、グループに送るだけでは、だれが読んだか分かりません。読んだ人がサインする、「確認しました」を押すなど、読んだ記録が残る形にすると、まだの人に声をかけられます。
6. 外国人の作業者には、やさしい日本語か母国語で
安全に関わる内容は、とくに正確に伝える必要があります。短い文・はっきりした言い方にするか、母国語に訳して伝えます。言い換えのコツは工場で使える「やさしい日本語」言い換え例文集にまとめています。
共有するときの書き方の例
| 伝わりにくい書き方 | 伝わる書き方 |
|---|---|
| 床がすべりやすいので注意。 | 【3号機の右側の通路】クーラントがもれて床がすべります。今日の修理まで、黄色いコーンの内側を通らないでください。(写真あり) |
| フォークリフトに気をつけて。 | 【資材置き場の出口】棚のかげからフォークリフトが出てきて、ぶつかりそうになりました。出口では一度止まって、左右を見てください。 |
| カバーに手をはさみそうになった人がいた。 | 【プレス2号機】ワークを取り出すとき、カバーが下がってきて手をはさみそうになりました。取り出す前に、カバーが上で止まっているか確かめてください。保全に修理を頼んでいます。 |
書き方の型は「【場所】何が起きたか + どうしてほしいか + 今の対応」です。どうしてほしいかまで書くと、読んだ人がすぐ行動に移せます。
共有の方法を比べる
| 朝礼で話す | 掲示板に貼る | チャットで送る | 現場向けのツール | |
|---|---|---|---|---|
| 早さ | 次の朝礼まで | 貼ればすぐ | すぐ | すぐ |
| 休み・夜勤の人 | × | △(見に行けば) | ○ | ○ |
| どこの話か | 話し方しだい | 書き方しだい | 流れて探しにくい | ○ 機械・場所ごとに残る |
| 読んだ記録 | × | △(サイン欄) | △(既読の数) | ○ だれがいつ読んだか |
| 写真 | × | △ | ○ | ○ |
どれか1つに決める必要はありません。たとえば「すぐに知らせて読んだ記録を残すのはツール、毎月の振り返りは安全会議、とくに大事なものは朝礼でも話す」のように組み合わせると、漏れが減ります。
まとめ
- ヒヤリハットは、報告して終わりではなく、同じ場所で働く全員に伝わってはじめて役に立つ
- 報告した人を責めない。共有は「場所と状況」を中心に
- どの機械・どの場所かをはっきり書き、写真を付け、その日のうちに次の勤務帯へ
- 読んだ記録が残る形にして、まだの人に声をかける
- 外国人の作業者には、やさしい日本語か母国語で