外国人の作業者への安全教育はどうする?工場で伝わる進め方と、教えたあとの確かめ方・記録
技能実習や特定技能などで、外国人の作業者が働く工場は年々増えています。安全のルールは、作業の注意点の中でも特に「伝わったつもり」が許されないものです。この記事では、外国人の作業者への安全教育で事業主に求められていること、伝わらない理由、工場でできる進め方と、教えたあとの確かめ方・記録の残し方を紹介します。
外国人労働者の労働災害の状況
厚生労働省の発表では、令和6年の外国人労働者の死傷年千人率(1年間に、働く人1,000人あたり何人が休業4日以上のけがや病気になったか)は2.71でした。休業4日以上の死傷災害の全体の千人率は2.35で、外国人労働者のほうが高くなっています。国の労働災害防止計画(第14次)でも、「外国人労働者の死傷年千人率を令和9年までに労働者全体の平均以下とする」ことが目標に入っています。
事業主に求められていること
雇い入れたときや作業内容を変えたときの安全衛生教育は、日本人・外国人に関係なく、労働安全衛生法で事業主に求められています。そのうえで、厚生労働省の「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」では、外国人労働者について次のことが示されています。
- 安全衛生教育は、理解できる方法で:母国語を使う、視聴覚教材(写真・動画)を使うなど
- 日本語と基本的な合図を身につけてもらう:労働災害を防ぐための指示を理解できるように
- 標識・掲示は、図解などで:外国人労働者がその内容を理解できる方法で
つまり、「日本語で説明した」「資料を渡した」だけでなく、相手が理解できたかまでが大切になります。
安全のルールが伝わりにくい理由
- 安全の言葉は、日本語の授業で習わない:「挟まれ」「巻き込まれ」「はね返り」「養生」などは、日常の日本語では使わない
- 1回の教育で終わる:入社のときに一度説明しただけで、配置が変わっても教え直していない
- 危ないことの感じ方が違う:母国の工場ではふつうだったやり方を、そのまま続けてしまうことがある
- 「止めていい」が伝わっていない:機械を止めると怒られると思い、異常があっても動かし続けてしまう
- けがやヒヤリを言い出しにくい:立場や在留のことを心配して、小さなけがを報告しないことがある
- 「分かりました」が理解の印にならない:「聞こえました」の意味で返事をしていることがある
伝わる安全教育の進め方:5つのステップ
1. 作業ごとに「やってはいけないこと」を3つに絞る
安全のルールを全部いっぺんに教えても、覚えきれません。その人が担当する作業で、けがにつながるものを3つほどに絞り、そこから教えます。例えば「動いている機械に手を入れない」「カバーを外したまま動かさない」「異常があったら止めてから呼ぶ」などです。
2. 母国語・写真・動画を組み合わせる
説明は母国語の資料や訳を使い、危ない場所・正しい姿勢・保護具のつけ方は写真や動画で見せます。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」では、外国人労働者向けの多言語の安全衛生教材が公開されています。一般的な内容はこうした教材を使い、自社の機械や作業に固有のことは、自社で写真を撮って補うと効率的です。
3. 合図と「止める言葉」をそろえる
緊急のときに使う言葉と合図は、工場の中で1つにそろえます。「止めて」「ストップ」など、だれが言っても同じ意味になる言葉と、非常停止ボタンの場所を、最初の日に実際に押す練習までしておきます。「異常があったら止めてよい。止めたことで怒られない」と、はっきり伝えることも大切です。
4. やってみせて、やってもらって、確かめる
説明を聞いて「分かりました」で終わらせず、実際にやってもらいます。「この機械で、やってはいけないことは何ですか?」「異常があったら、だれに言いますか?」のように中身を聞き返すと、理解できているかが分かります(工場で使える「やさしい日本語」言い換え例文集)。
5. 教えたことを記録に残す
いつ、だれに、何を、どの言語で教え、どう確かめたかを残します。記録があると、教え漏れに気づけるほか、配置換えのときに何を教え直せばよいかも分かります。
安全教育の記録に残したいこと
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 日付・教えた人 | 10/16 班長 佐藤 |
| 教わった人 | グエン・ヴァン・A(ベトナム語) |
| 作業・機械 | プレス2号機の材料セット |
| 教えた内容 | 両手押しボタンの使い方、金型に手を入れない、異常時は非常停止 |
| 使った資料・言語 | 自社の写真つき手順書(ベトナム語訳つき) |
| 理解の確かめ方 | 実際にやってもらい、非常停止の場所を指さしてもらった |
教えたあとも、くり返し届ける
安全教育は、入社のときの1回で終わりではありません。次のようなときに、あらためて伝えます。
- 配置や作業が変わったとき:新しい機械・作業の「やってはいけないこと」を教え直す
- ヒヤリハットや事故があったとき:同じ作業をする人全員に、何が起きて、何を変えたかを伝える(ヒヤリハットを全員に共有するには?)
- ルールや手順を変えたとき:変えた点を、母国語で、読んだかが分かる形で届ける
- 季節の危険:夏の熱中症など、時期ごとの注意を前もって伝える
こうした連絡を、母国語に訳して届け、だれが読んだかまで分かるようにしておくと、教え漏れを減らせます。訳を使うときの注意は外国人の作業者に作業の注意点を正しく伝えるには?でも紹介しています。
掲示・標識の工夫
- 文字だけでなく、絵や記号(ピクトグラム)で「禁止」「注意」が分かるようにする
- 日本語の横に、作業者の母国語を短く書き添える
- 危ない場所は、床の色やテープで目に見えるようにする
- 貼りっぱなしで古くなった掲示は外す(大事な掲示が埋もれないように)
外国人の作業者への安全教育チェックリスト
- □ 担当する作業ごとに「やってはいけないこと」を絞って教えた
- □ 母国語の資料・訳や、写真・動画を使った
- □ 「止めて」の言葉と非常停止の場所を、実際に練習した
- □ 「異常があったら止めてよい」と伝えた
- □ やってもらう・聞き返すで、理解を確かめた
- □ いつ・だれに・何を・どの言語で教えたかを記録した
- □ 配置換え・ルール変更・ヒヤリハットのときに、教え直す流れがある
まとめ
- 外国人労働者の死傷年千人率は全体より高く、国も改善を目標にしている
- 安全衛生教育は、母国語や写真・動画など「理解できる方法」で行う
- 作業ごとに絞って教え、止める言葉と合図をそろえ、やってもらって確かめる
- 教えた記録を残し、配置換えやルール変更のたびにくり返し届ける
ルールの変更やヒヤリハットを、作業者の母国語で届けて、だれが読んだかまで分かる道具の例として、外国人の作業者にも伝わる、工場の連絡・申し送りアプリも紹介しています。