工場で使える多言語の連絡ツールの選び方|翻訳アプリ・チャット・現場向けツールの比べ方
技能実習や特定技能で働く人が増え、「作業者の半分が外国人」という工場もめずらしくなくなりました。注意点や申し送りを母国語で伝えたいと思ったとき、どんな方法があり、何を基準に選べばいいのか。この記事では、工場で使える多言語の伝え方を4つに分けて比べ、選ぶときのチェックポイントを紹介します。
多言語で伝える4つの方法
1. 通訳・母国語が話せる先輩にたのむ
同じ国の先輩や、通訳ができる社員に訳してもらう方法です。細かいニュアンスまで伝わり、質問にもその場で答えられます。一方で、その人がいない時間(夜勤・休み)には使えず、本人の負担も大きくなります。
2. スマホの翻訳アプリを使う
スマホの翻訳アプリや、国の研究機関(情報通信研究機構)が公開している音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」などを使い、その場で訳す方法です。無料で、今日から始められます。ただし、その場の会話のための道具なので、あとから見返せる記録は残りません。交代の相手に伝えたいことや、全員に知らせたいことには向きません。
3. 翻訳のついたチャットを使う
メッセージを自動で翻訳してくれるチャットアプリや、仕事用チャットの翻訳機能を使う方法です。文字で残り、離れた人にも送れます。ただし、連絡が次々と流れていくので、機械ごとの注意点や、前の勤務帯からの申し送りが埋もれやすくなります。また、だれが読んだかが分からないものや、作業者一人ひとりにアカウント(メールアドレスなど)が必要なものもあります。
4. 現場の連絡に特化したツールを使う
機械や工程ごとに連絡を残し、作業者の言語に訳して見せ、読んだかどうかまで記録する、現場向けの道具です。申し送りや変化点の伝達に向いています。費用がかかるものが多いので、人数と料金のしくみを確かめて選びます。
4つの方法の比べ方
| 通訳・先輩 | 翻訳アプリ | 翻訳つきチャット | 現場向けツール | |
|---|---|---|---|---|
| 費用 | 人の時間 | 無料のものが多い | 無料〜有料 | 有料が多い |
| いない時間も伝わるか | × | △(その場だけ) | ○ | ○ |
| 記録が残るか | × | × | ○(流れやすい) | ○(機械ごとに残る) |
| だれが読んだか分かるか | △(聞けば分かる) | × | 製品による | ○ |
| 細かいニュアンス | ◎ | △ | △ | △ |
どれか1つで全部をまかなう必要はありません。たとえば「ふだんの申し送りや注意点はツールで残し、むずかしい説明や教育は通訳の先輩にたのむ」のように、組み合わせるのが現実的です。
選ぶときの7つのチェックポイント
1. 自分の工場の作業者の言語に対応しているか
ベトナム語・中国語・タガログ語(フィリピン)・インドネシア語・ミャンマー語・ポルトガル語・ネパール語など、工場によって必要な言語はさまざまです。今いる人だけでなく、これから受け入れる予定の国の言語も確かめます。
2. 原文(日本語)もすぐ見られるか
自動翻訳は便利ですが、完ぺきではありません。訳がおかしいと感じたときに、日本語の原文を確かめられるか、日本語が少し読める作業者が原文と見比べられるかは大事なポイントです。
3. 数字・品番・機械名がそのまま残るか
工場の連絡でいちばん困るのは、寸法や数量、品番が訳のなかで変わってしまうことです。「0.02」「A-2051」「3号機」のような数字や記号が、訳のあとも元のまま残るかを、試しに使って確かめましょう。
4. だれが読んだか、記録が残るか
翻訳して送っても、読まれていなければ伝わったことになりません。「確認しました」の記録が残り、まだ読んでいない人がひと目で分かると、声をかける相手がすぐ分かります。品質監査で「伝えた記録」を求められたときにも役立ちます(くわしくは品質監査で「伝えた記録」を求められたら)。
5. 作業者の操作がかんたんか
作業者全員にメールアドレスやアカウントの登録が必要な道具は、導入のときにつまずきがちです。アプリのインストールがいらない、名前を選ぶだけで使える、画面のボタンも母国語で表示される、といった点を確かめます。
6. 個人のスマホと、辞めた人の扱い
作業者の個人のスマホで使う場合、辞めたあとも工場の情報が見られたままにならないか、管理者が端末を切れるかを確かめます。共用のタブレットで使えるかどうかも、現場によっては大事です。個人のスマホでの業務連絡の注意点は工場の業務連絡をLINEでする問題点でも紹介しています。
7. 料金のしくみ(人数・翻訳の回数)
1人あたりの月額か、工場ごとの定額か。翻訳の回数に上限や追加料金があるか。外国人の作業者だけでなく、日本人の作業者や管理者も人数に入るか。見積もりの前に確かめておくと、あとで「思ったより高い」を防げます。
導入の進め方
- 1つの部署・1つのラインで試す:外国人の作業者が多い部署から始めると、効果が分かりやすい
- まず「重要な連絡」から:安全・品質に関わる連絡や、交代の申し送りから使い始める
- 元の日本語をやさしく書く:短い文・数字ではっきり、が訳の正確さにつながる(工場で使える「やさしい日本語」言い換え例文集)
- 作業者に訳の感想を聞く:分かりにくい訳があれば、元の日本語の書き方を変える
- 1か月使って、広げるか決める:「伝わっていなかった」が減ったか、確認の記録を見て判断する
自動翻訳を使うときの注意
- 自動翻訳は完ぺきではありません。安全に関わる内容は、写真・図や、実際にやってみせることと組み合わせます
- 専門用語は訳がずれやすいので、写真つきの用語集を用意しておくと安心です
- 訳を読んだあとに、「何個測りますか?」のように中身を聞き返すと、本当に伝わったかが分かります
まとめ
- 多言語で伝える方法は、通訳・翻訳アプリ・翻訳つきチャット・現場向けツールの4つ
- その場の会話は翻訳アプリ、残したい連絡・申し送りはツール、と組み合わせるのが現実的
- 選ぶときは、対応言語・原文・数字の扱い・読んだ記録・操作のかんたんさ・辞めた人の扱い・料金を確かめる
- 元の日本語をやさしく書くほど、訳は正確になる