品質監査で「伝えた記録」を求められたら?工場の申し送り・変化点の伝達を記録に残す方法
取引先の品質監査や、ISO 9001の審査で「その注意点は、作業者全員に伝わっていますか?」「伝えたことを示す記録はありますか?」と聞かれて、答えに困ったことはないでしょうか。口頭で伝えた、ホワイトボードに書いた、というだけでは、伝わったことを示すのは難しいものです。この記事では、監査や不良の振り返りで求められやすい「伝えた記録」とは何か、現場の負担を増やさずに残す方法を整理します。
なぜ「伝えた記録」が求められるのか
不良やクレームが起きたとき、原因を調べると「注意点が次の人に伝わっていなかった」というケースは少なくありません。そのため監査では、手順書があるかどうかだけでなく、変更や注意点が、実際に作業する人まで届いているかが確認されます。
たとえばISO 9001には、組織の中で「何を・いつ・誰に・どのように伝えるか」を決めておくこと(7.4 コミュニケーション)や、必要な情報を文書や記録として管理すること(7.5 文書化した情報)が定められています。規格が「すべての連絡に記録を残せ」と求めているわけではありませんが、監査の場で「決めたとおりに伝えている」ことを示すには、記録があるのがいちばん確実です。
自動車関係などの取引先では、材料・設備・作業者・方法が変わったときの変化点の連絡が、特にしっかり確認されることがあります。
監査で聞かれやすいこと
取引先や審査の内容によって違いますが、伝達について聞かれやすいのは次のようなことです。
- 手順や注意点が変わったとき、作業者にどうやって伝えたか
- 全員に伝わったことを、どうやって確かめたか(休みの人・夜勤の人も含めて)
- 設備の修理や調整のあと、次に動かす人に何を伝えたか
- 不良が出たとき、再発防止の内容を誰に、いつ伝えたか
- 外国人の作業者に、内容が理解できる形で伝えているか
どれも「伝えた」だけでなく、いつ・誰に・何を伝え、相手が受け取ったかまで示せると、説明がぐっと楽になります。
「伝えた記録」に残したい5つの項目
| 項目 | 例 | なぜ必要か |
|---|---|---|
| いつ | 10/13 7:40 | 変更の前に伝えたかを示せる |
| 誰が出したか | 保全 田中 | 内容について、誰に聞けばよいか分かる |
| どの設備・品番か | 3号機 | あとから設備ごとにたどれる |
| 何を伝えたか | 主軸ベアリング交換。再開後の最初の5個は外径を全数測定 | 伝えた内容そのものが残る |
| 誰がいつ確認したか | 佐藤 7:52、グエン 8:05 | 相手が受け取ったことを示せる。まだの人も分かる |
特に大事なのは最後の「誰がいつ確認したか」です。出した側の記録だけでは、「書いたけど読まれていなかった」可能性を否定できません。
記録を残す方法と、それぞれの注意点
1. 紙の申し送り表に、確認欄を作る
いちばん始めやすい方法です。申し送り表に「確認者・日時」の欄を作り、読んだ人に名前を書いてもらいます。注意点は、保管と検索です。紙はファイルにとじていくと、「3か月前に5号機で何を伝えたか」を探すのに時間がかかります。保管期間と、とじ方(月ごと・設備ごと)を決めておきましょう。書式は申し送りのテンプレートが使えます。
2. 朝礼・引き継ぎの場で伝え、出席者を記録する
重要な変更は、口頭で説明したうえで、その場にいた人の名前を記録する方法もあります。ただし、休みの人や別の勤務帯の人には届かないので、あとから来た人への伝え方も決めておく必要があります。
3. チャットやメールで送る
送った記録は残りますが、相手が読んだかどうかは分かりにくい方法です。LINEなどのグループでは、既読の人数は分かっても、誰が読んだかは分かりません。くわしくは工場の業務連絡をLINEでするときの問題点で説明しています。
4. 確認の記録が残るツールを使う
連絡ごとに「確認しました」を押してもらうツールなら、誰がいつ確認したかが自動で残り、まだの人も一覧で分かります。設備ごと・期間ごとに記録を書き出せるものを選ぶと、監査の前に資料をまとめる手間が減ります。
現場の負担を増やさないためのコツ
- 記録するものを決める:すべての連絡に確認を求めると、形だけのサインになります。設備の修理・品質の注意・安全・変化点など、記録が必要なものにしぼりましょう。
- 書く形をそろえる:「何をした・今どうなっている・次の人が注意すること」の3つにそろえると、書く時間も読む時間も短くなります。
- 確認は「読んだ」だけでなく「分かった」に:重要な内容は、確認したあとに一言で言い返してもらうと、理解の確認にもなります。
- 外国人の作業者には、分かる言葉で:日本語だけで出した連絡に確認のサインがあっても、内容を理解していなければ意味がありません。母国語の訳を添える、やさしい日本語で書くなどの工夫が必要です。外国人の作業者に正しく伝える工夫も参考にしてください。
- 記録を見返す場を作る:月に一度、確認が遅れた連絡や、まだの人が多かった連絡を振り返ると、伝え方の改善につながります。
まとめ
- 監査では、手順があるかだけでなく、注意点や変更が作業する人まで届いているかが確認される
- 「いつ・誰が・どの設備で・何を・誰がいつ確認したか」の5つが残っていると説明しやすい
- 出した側の記録だけでなく、受け取った側の確認の記録が大切
- 記録するものをしぼり、書く形をそろえると、現場の負担を増やさずに続けられる
申し送りの漏れそのものを減らす方法は、申し送りの漏れを防ぐ7つの方法でくわしく紹介しています。