申し送りの漏れはなぜ起きる?製造現場の交代勤務で「伝えたつもり」をなくす7つの方法
「言ったはずなのに、伝わっていなかった」。製造現場の交代勤務では、こうした申し送りの漏れが、不良やチョコ停、ときにはけがの原因になります。この記事では、申し送りの漏れが起きる原因と、現場ですぐに始められる対策を整理します。
申し送りの漏れは、なぜ起きるのか
申し送りの漏れは、個人の注意力だけの問題ではありません。多くの場合、伝え方のしくみに原因があります。よくあるのは次のようなケースです。
- 口頭だけで伝えている:交代の数分で話したことは、聞いた人の記憶にしか残りません。休憩明けの人や、遅れて来た人には届きません。
- 書く場所がバラバラ:ノート、ホワイトボード、日報、LINEのグループなど、場所が分かれていると「どこを見ればいいか」が人によって変わります。
- 読んだかどうかが分からない:ホワイトボードに書いても、誰が見たかは分かりません。書いた人は「伝えたつもり」になります。
- どの機械の話かがあいまい:「さっきの機械」「いつものやつ」では、別の人には通じません。
- 情報が流れて消える:チャットや掲示は、新しい書き込みや貼り替えで、大事な連絡が埋もれていきます。
- 言葉の壁:外国人の作業者には、専門用語やあいまいな言い回しが正しく伝わらないことがあります。
「伝えたつもり」をなくす7つの方法
1. 機械(設備)ごとに、書く場所を決める
申し送りは「その機械を次に動かす人」に届けば十分なことがほとんどです。機械ごとに書く場所を決めておくと、作業者は自分が触る機械の情報だけを確認すればよくなり、見落としが減ります。機械番号の書き方(「305」「305号機」「No.305」など)がバラバラだと探しにくくなるので、呼び方もそろえておきましょう。
2. 「何をした・今どうなっている・次の人が注意すること」の3つで書く
申し送りが長くなるほど、肝心なことが埋もれます。書く内容を3つにしぼると、書く側も読む側も迷いません。
- 何をした(何が起きた):例「主軸ベアリングを交換した」
- 今どうなっている:例「試運転は問題なし」
- 次の人が注意すること:例「再開後の最初の5個は外径を全数測定」
特に3つ目の「次の人が注意すること」が抜けると、申し送りは記録になっても、次の行動につながりません。
3. 読んだ人に「確認しました」を残してもらう
伝わったかどうかを確かめる一番確実な方法は、読んだ人にサイン(確認の記録)を残してもらうことです。紙なら確認欄に名前を書く、デジタルなら「確認しました」を押すなど、方法は何でもかまいません。大切なのは、誰がいつ読んだかがあとから分かることです。
4. まだ読んでいない人が分かるようにする
確認した人の記録があれば、裏返すと「まだの人」も分かります。リーダーや管理者は、まだの人にだけ声をかければよくなり、全員に同じことを何度も言う手間が減ります。
5. 重要度を分ける
すべてを「重要」にすると、結局どれも読まれなくなります。機械が止まっている、安全に関わる、品質に関わるなど、全員に今すぐ気づいてほしいものだけを目立たせ、それ以外はふだんの連絡として扱うのがコツです。
6. 頼みごとは「担当」と「完了」を決める
「明日の朝イチで再測定をお願い」のような頼みごとは、誰がやるのかと、終わったかどうかが分からないと、やりっぱなし・頼みっぱなしになります。担当者を決め、終わったら「完了」を残してもらうようにしましょう。
7. 外国人の作業者には、母国語やかんたんな日本語で
技能実習や特定技能の外国人作業者がいる現場では、日本語の申し送りが正しく伝わっていない可能性があります。短い文で書く、数字ははっきり書く、母国語の訳を添えるといった工夫が有効です。くわしくは外国人の作業者に作業の注意点を正しく伝える方法で紹介しています。
紙・ホワイトボード・LINE・専用ツールの比べ方
申し送りの道具には、それぞれ向き不向きがあります。
| 紙のノート | ホワイトボード | LINEなどのチャット | 申し送り専用のツール | |
|---|---|---|---|---|
| 始めやすさ | すぐ始められる | すぐ始められる | すでに使っていることが多い | 準備が少し必要 |
| 誰が読んだか | 確認欄を作れば分かる | 分からない | 既読の数は分かるが、誰が・どの件かは追いにくい | 人ごとに記録が残る |
| 機械ごとの整理 | ページを分ければできる | 書ききれない | 会話に流れて埋もれやすい | 機械ごとに整理できる |
| 過去の記録を探す | めくって探す | 消すと残らない | 検索はできるが探しにくい | 機械・期間・言葉で探せる |
| 外国人の作業者 | 訳を書き添える必要 | 訳を書き添える必要 | 翻訳は各自で | 自動翻訳があるものも |
人数が少なく、全員が同じ時間に顔を合わせられる現場なら、紙やホワイトボードでも十分に回ります。交代勤務がある、部署が分かれている、外国人の作業者がいるといった現場では、確認の記録が残る方法を選ぶと、漏れを減らしやすくなります。
記録が残ると、あとで助かる
申し送りと確認の記録が残っていると、不良やトラブルが起きたときに「いつ、誰に、何が伝わっていたか」をたどれます。原因の切り分けが早くなるだけでなく、取引先から品質の確認を求められたときにも、伝達の記録として説明しやすくなります。
まとめ
- 申し送りの漏れは、個人の注意力より、伝え方のしくみで起きることが多い
- 機械ごとに書く場所を決め、「何をした・今どうなっている・次の人が注意すること」で書く
- 誰が読んだか・まだの人は誰かが分かるようにする
- 重要度を分け、頼みごとは担当と完了を決める
- 外国人の作業者には、母国語やかんたんな日本語で伝える
まずは、書く内容をそろえるために申し送りのテンプレートから始めてみてください。